冬の洗濯、夏と同じ設定で洗っていませんか?
我々プロの洗濯において、ドライクリーニングでも水洗いでも、
冬と夏の洗いは全く違います。
冬の洗いで大きな軸足となるのは、水温と静電気対策の2つです。
冬は水温が低くなり、汚れが落ちづらくなってしまいます。
また、乾燥で静電気が起きやすいので
これをいかに食い止めるか、という点に注意するわけです。
最も、プロの場合、温度に関しては
一気に水温を上げるため、それほど影響はありません。
静電気に関しては、水洗いでもドライクリーニングでも、
帯電防止剤、柔軟剤の投入量を夏より増やすようにしています。
では、家庭の洗濯ではどうすればよいのでしょうか?
冬の洗濯、家庭ではどうする?
冬に水道水で洗うことの2つの問題点
水温が高い夏に比べ、
水温が低くなる冬は汚れ落ちに劣るというのは
お分かりいただけると思います。
汚れ落ちは洗剤よりも水温が重要である、というのが私の論理です。
家庭用洗濯機では水温調整の機能が無いものが多いです。
冬の時期、15°cを切ってる水道水で洗うとなると何が起こるのでしょうか。
洗剤というのは、水に攪拌して溶け始めてから洗剤効果が発揮できるまでの時間、
トップピークに持って行くまでの時間が、水温が低いと長くなってしまいます。
そうすると、10分洗っていても、攪拌スピードが遅いと
1、2分は洗剤効果のトップピークから外れてしまう、といった状況になり、
10分洗いでも9分8分の洗い効果しかない、ということになるのです。
さらにもう一つ、これも私の論理ですが
油分の汚れは温度が低いと溶けないです。
タンパク系や醤油・ソースのタンニン系、これらは洗剤の力で落とすのですが、
油分に限っては高温度でしか落ちません。
たとえばポロシャツ・ワイシャツの黒くなった襟汚れや、ソックスの黒い汚れが
油分の汚れになりますが、これらは冬の水洗いでは極めて落ちにくくなります。
冬はスピード洗いを避けて、 洗い時間を長めに。
以上のことをふまえると、
ご家庭の洗濯機で、「スピードコース」といった
洗い時間の短いコースは冬にはおすすめできません。
家庭用洗濯機の通常コースでも個人的には時間が短いと思っているのですが、
通常洗いもしくは洗い時間が長いコースを選んでいただくなど、
夏に比べて洗い方のコース選択には注意していただきたいと思います。
水温が低いことで抑えられるリスクも
汚れが落ちづらくなる冬ですが、相反してリスクが小さくなることもあります。
水温が低いと、染色流れ、色落ちのリスクは極めて小さいので、
夏に比べて色流れに対しての気遣いは軽減できます。
静電気防止のために
それともう一つ、冬はやはり乾燥してますから
静電気が起こる確率は夏に比べて極めて高くなります。
冬にコインランドリーで乾燥機から洗濯物を出すとき、タオルなどはよく静電気が起こります。
真っ暗な中で品物を出すと静電気がはっきり見えるぐらいです。
汗で肌荒れしてしまうな、という方はソフターの量を少なめに、
というお話もしていますが、
冬場、静電気を防止したい場合は、
柔軟剤の投与量を若干増やしていただくのが得策でしょう。
人気の素材◯◯◯◯◯◯は要注意!?
最近、防水・防風性の高いゴアテックスという素材の
ジャンパーやコート類が非常に多くなっています。
これらの品質ラベルを見ると水洗い OK になっています。
しかしながら、この風を通さないという特性は、
洗濯に限って言えば手強い問題となるのです。
ゴアテックス素材の品物を全自動の家庭用洗濯機で脱水後出すと、
びちゃびちゃとまだ水が残っています。
これをそのままハンガーに干して自然乾燥すると、
残った水が衣類の下の方にたまっていきます。
夏ならまだしも、冬の場合乾き時間がかかります。
この状態で水がなかなか乾かないと、最終的に袖・裾に黄色く紋ができてしまいます。
これを防ぐには、本当は乾燥である程度乾かすのが良いのですが、
これを高温でコインランドリーなどでやると、
ゴアテックスの場合、表面が剥離してしまうのです。
ではどうするか。
全自動の洗濯機をお使いの場合は面倒だと思うのですが、
もう一度脱水し直してから干すこと、そして
夜洗わずに、太陽が当たってる時に干す。というふうにしていただきたいと思います。
我々プロであっても絞り直しはします。
きりいでは、一回全工程が終わってから、
もう一度30秒から1分絞って一旦止めて、もう一度絞ります。
そうしてある程度水分が抜けた状態で、
低温乾燥で水分を弾き飛ばした上で、乾燥室で一気に乾燥します。
そうすると水の紋が残りません。
ただこれは極めて難しいので、ゴアテックスのような素材、
特に大切な商品である場合はプロにお任せいただいた方が
安心して着用していただけるのではないかと思います。
冬の家庭洗濯 ~まとめ~
●水温調整のできない家庭用洗濯機では、冬場はスピードコースを避け、
洗い時間が長めのコースにする。
●静電気を抑えたい場合は、柔軟剤を若干多めに投入してみる
●ゴアテックスなど保温性、防風性の高い素材は、
冬場に水分が多く残ったまま自然乾燥すると、
なかなか乾かない間に紋ができてしまう。
防ぐには全工程後にもう一度脱水、
夜間に洗濯せず日光のある時間に干すことが望ましいが、
確実に水のあとが残らないようにしたいなら是非プロにお任せを。