対談第1回はこちら。
株式会社サンエルの代表取締役社長 辻橋 英延氏 を迎えて
始まった新企画、社長対談。
「成功したことへの未練がなく、次へ行けるのって、なんで?」
「なんでこの事業をやろうと思ったの?」
「楽しいって、なんだと思います?」
過去の経験と思いをたどりながら、互いの今を紐解く全5回の対談。
「失敗」について多く語られた第1回から、
話のテーマは「若者」「色」「今の仕事をしていなかったら?」と移ります。
「桜、今いっぱい咲いてるじゃないか!」
桐井
僕、最近、年賀状にも書かしてもらったんですけど、
若者っていうテーマは、いいなって思うんですよ。
若い子って、本当に楽しいだろうなとか。
僕はどっちかっていうと、若い子は
賢過ぎるとか、お金ばっか貯金してるっていう子って、あんまり好みじゃなくて。
人にお金を使って、どこへ行っても自分がお金を出して、っていう人が
うちにおるんですけど、ミヤタ君っていうのが。
どこ行っても、自分、金ないくせに、みんなにおごるんですよ。
「社長、僕、また昨日全部出してしもうた」みたいに言うんですけど、
「ええことやな」っていう。人に金を使うんは、ええことって。
辻橋
面白い人いますね。そのミヤタさんは若いんですか。
桐井
26です。
辻橋
26で!
桐井
僕は、若者っていうのは明日のことを考えなくていいと思ってるんです。
いろんな経験を積んで、それが人生の基本になってくわけやから、小さく生きなくていい。
ところが僕らになると、明日が来るかどうかも分からん年齢になってきて、
辻橋社長そんなことないでしょうけど、
僕なんか朝起きて、今日も生きてるなって、ときどき思うときあるんですよ。
辻橋
でも社長、私も最近、桜見て思うようになりました。
あと何回見れるんやろうって。
桐井
それはちょっと早過ぎ!
辻橋
早いですか。昔は無限に桜あって、毎年咲くもんやなっていうけど、
俺もあと桜、何回見れんねやろうなって、咲くたびに思うようになってきました。
桐井
僕、梅が大好きで、桜に対して、あんま意識がないんです。なんでか。
辻橋
聞きたいです、そこ。
桐井
いつも毎年、みんなに言うことが一つあって。
桜が満開の時期に、花見をしてるようなクリーニング屋さんは駄目ですね。
桜の時期は、クリーニングのピークの第一波なんです。
桜が咲くっていえば20度以上で、
クリーニング屋は、ボーダー18っていうのがあるんです。
18度になったら、みんな脱ぎだすんです。
辻橋
ちゃんとデータ持たれてますね。
桐井
20度になったら、その上いくんです。
23度になると、本当に脱いでいただけます。
そうすると、うちのほうに入荷されるじゃないですか。
だからボーダー18なんです。15、16度のときはまだ駄目なんです。
そうすると桜って、満開のときはかなり暖かいですよね、昼間。
桜…見たことない。
うちのスタッフもかわいそうに、
桜を見に行く機会もないだろう。夜桜ぐらい。
僕、みんなに言うんです。
うちの工場、今いっぱい商品の桜が咲いてるじゃないか!みたいに言うんです。
辻橋
(笑)
桐井
うちの商品、今、桜満開だぜみたいな、
散らしたらあかんで!みたいなことを言う。
辻橋
すてきな話じゃないですか、その話もね。本当、出てきますね。
それで桜、なるほど。
桐井
梅はいいんですよ。梅が咲くんは、まだ寒いときでしょ。
梅はじっくり見れるんです。
僕、自分の家の庭に梅があるもんですから、
それがすごい楽しみなんですよ、毎年。
今年もきれいに咲いたなとか。
辻橋
今年の社長の梅は。
桐井
今年、切り過ぎ。
梅の枝は切ると、僕のは紅梅ですから、
本当にきれいなピンクなんです。木が、幹が、枝も。
あんなきれいなピンクの枝とか幹って、
本当に梅っていいよなって、僕思うんです。
人が似合わないって言ってもいい
桐井
僕、色に対するこだわりっていうんが、非常に強くて。一番好きな色は青なんです。
辻橋
青なんですね。
桐井
沖縄がなんで好きかっていうと、
あの海の色が好きやからという、一つの理由ですよ。
二つ目に好きな色がピンクなんです。
青とピンクが好き、これがいわゆる、そういう木とか、場所とか、
生活様式に非常に大きな影響があるよなって、
自分で思ってます。社長、何色が好き?
辻橋
私はね。
桐井
黄色なんて言わないでよ。
辻橋
黒です。
桐井
黒。理由は?
辻橋
私、黒は白、青、ピンク、いろんなものに合わせれて好きなんですけど、
私は自分で、社長職もそうなんですけど、裏方やと思っていて。
例えば利休さんの利休黒とかもそうなんですけど、
自分が主役ではなくて、
茶の色を映えさすための黒であり、
背景のための黒、そこにあるものを浮き立たせるための黒、っていう。
何にでも、ちゃんと後ろに付けるよ、というような、
根本になる感じの色が好きなんだろうなっていう、自分で分析してます。
桐井
野村克也みたいですね。
辻橋
野村さん大好きですね。
桐井
僕は長嶋ですけど。
辻橋
私はね、長嶋さん、まぶしいんですよ。
自分、あと前田慶次も戦国武将であんまり好きじゃないんですけど、
なんで好きじゃないかって、自分でも分かってて。
まぶし過ぎて憧れるんですよ。だから月見草やとか。
桐井
月見草。
辻橋
ああはなれへん。
桐井
嫌いな色は何ですか。
辻橋
金色ですね。
桐井
金色、一貫してるね。人生観出てるね。
金色は僕も、そんなに好きじゃないけど、
僕、嫌いなのは茶色ですね。グレーとか中途半端やから。
くっきり色が出る色が好きです、僕。
紫、好きですね。僕、服で一番、カジュアルな服で多いのは紫。
辻橋
紫、着こなしそうですね、社長。
桐井
紫、好き。
辻橋
紫は、着こなすの難しいですからね。
桐井
けど、服って簡単で、人が似合わないって言ってもいいの。
自分で気に入ってればいいだろうって思うと、着こなせるようになるのよ。
人の目を気にすると、その人の意見ばかりで、
他の人は全部駄目と思ってるかもしれんじゃないですか。
自分がよければいい。
辻橋
社長らしいですね。
親が残してくれる言葉
桐井
若者っていうキーワードに戻ると、
若者には明日のことを考えずに生きてほしいね。
そういう生き方ができるんは、そのときだけなんだよね。
今、僕がそれをしたら、とんでもないおじさんだよね。
辻橋
最近、大人って何だろうと思ったときに、
結構、若者を抑えつけたり、
いつまでも自分の既得権益とか立場を守るために、
若者を抑えつける大人が多過ぎるなと思って。
無茶で、無謀で、無知だったりする若者も、
いいよって言ってあげれる大人になりたい、増やしたいとは思ってるんです。
桐井
明日を考えなくて生きれる時代って、
そんな楽しい時代はないと、僕は思いますよ。
そういう経験をせずに大人になると、
大人になってから、しまったって思うんじゃないかな。
辻橋
確かに私も、偉大なる大人たちに支えられて生きてきた10代、20代だったんで。
桐井
よく言うんですよ、うちの会社のベテランに。
「『入ってきた人が、どうもね…』っていうけど、
あなたも入ってきたときは、そんなんやったよ」って。
これ最近話した話で、
「このクリーニングのきりいっていう会社、業績悪いから、
社長解雇!誰か社長代われよ」「Sさんどうや」って話になって。
ちょっとむっとするんですけど、この冗談で思ったことがある。
この仕事以外、何ができるんやろうって。
他のクリーニング屋さんで採用されて、
僕はそのクリーニング屋さんで今までみたいな
仕事ができるかっていうと、できないと思います。
やり方が全く違うから、
同じクリーニング屋であっても、同じじゃないっていうのが僕で。
そうすると全く経験のない職種の中に入ってきた人に、
「すぐ結果出せよ」って、それ無理。
自分も最初はよちよち歩きやったんやから。
桐井
どっちかっていうと僕、ウサギ好きじゃないんですよ。
この話分かります?イソップです。
これ、僕の人生のバイブルなんです。僕はカメが好きなの。
辻橋
すごく納得感ありますね。
桐井
ウサギはぱーって走るけど、途中で寝てるから、カメに抜かれるっていう話、
人生教えてるよね、イソップって。
僕は本当に不器用なんですよ。だから、努力を止めたことがない。
うちの母親が、僕褒めることは一つだけなんです。一つだけ。
うちの母親が面白いこと言いましたよ、死ぬ前に。
「あんたは一つだけ才能がある。誰にもない能力っていうのがある。
何か分かってる?」「分からん。」
「努力をし続ける能力、これがあんたの誰にもない能力。
足止めるなよ」みたいなこと言って、息引き取ったんですけど、
よう見てるな、母親はみたいな。
辻橋
私は父と14~5年前に死に別れてるんですけど、
父親と最後の話ができなかったのがね…
がんで、最後全然意識がなくなってたので。
そのお話聞いて、
母親、親が残してくれる言葉って、すごい。
しかも社長のこと、よう見られてるなって。
社長のお母さんっていう感じが今、話聞いてて思いましたね。
桐井
母親の教えって、結局僕の中で脈々と生き続けてますよ。
だから母親の影響はすごく大きいかな。
うちの母親も、すごい努力家でしたから、
どちらかっていうと、父と母の背中を見て、僕は育ったようなもんで。
それで僕は部下に教えないんですよ。背中見て仕事覚えてねみたいな感じで。
それでいいと思ってるんですけど。
僕が死んでから、あのとき社長がこんなこと言うてくれたなっていうのを
思い出してくれればいいかな、みたいな。
辻橋
社長の思いの乗った言葉を直接聞ける機会とか、
映像、画像でもいいんで、ブログでもそうですし、
この話を、もちろん幹部の人たち、管理職の人たちにはされてると思うんですけど、
今のような話を伝えていける方法があるといいなって思いましたね。
私はこうやってお話を聞かしていただいて、
「私もそうやな」とか、いろんな気付きいただいてるので。
生まれ変わって一番したい仕事。
辻橋
私、もうひとつ質問しようと思ってたのが、
今の仕事してなかったら何してましたか?
っていう話をしようと思ったんですけど、
さっきの話で、ほぼ完結してますね。
桐井
考えたことないな。
辻橋
私も考えたことが、あんまりなかったもので、
社長との対談の、一つのポイントとして面白いかなって。
桐井
「継がないかん」って、何か自分を押し殺して、
跡を継がれるっていう方が結構おみえですよね。
僕は自然でしたね。
子どもの頃から父親、母親がクリーニングという仕事をするのを見てて。
辻橋
本当に背中見せられてるご両親だったんですね。
それって結構すごいことなんじゃないかな。
私の周りでも1人ぐらいですね。
それ以外の人は継ぎたくなかったとか、選択肢に悩んだっていう方多いんですよ。
桐井
そこの点は、職業選べなかったから残念やったな、
っていうのはないですね。
辻橋
それはすごいこと。言い切れるのは本当、すてきですね。
桐井
僕が死んで、生まれ変わって一番したい仕事は何ですか、
一番したくない仕事は何ですか、これがあるんですよ、僕。聞いてくれる?
辻橋
お願いします。
桐井
死んで、一番、生まれ変わってしたい仕事、クリーニング屋です。
辻橋
言い切るのがすてきだな。そっちは社長っぽいなと思うんです。
逆にしたくない仕事が想像つかない。
桐井
あるんです。社長です。社長にはなりたくないー!!
辻橋
(笑)
でも私、社長じゃない社長、想像つかないんですけど。
桐井
いや僕は1人で洗って、1人でプレスして。
自分で全てやって、納得した仕事をお客さんにお渡ししたいっていうのが。
あのね「社長」って…僕はクリーニング屋したいのに、
今クリーニングなんかやってないんですよ。社長業で追われて。
それは、こんなはずじゃなかったよな、一体何をしてるんだ、みたいな。
それで最近、もう一回技術的なことに立ち返っています。
お客さんが本当に喜んでるかどうか、納得していただいてるかどうか疑問やから、
もう一回技術的なことを追求してみるって、やりだしてるんですよ。
辻橋
すごいことだけど、普通ではないですね。素直な感想なんですが。
桐井
それはお金もうけとか、利益とは全く別の問題ですよ。
お客さんに喜んでもらうことが、僕の一番の願いですから。
それが楽しくてこの仕事に入ったのに、
今やってることというのは、やりたいことと乖離があって、
今、非常にそれで悶々としてますよ。
辻橋
納得いきました。
私、桐井社長がやりたくない仕事みたいな、ネガティブな…何だろう?と思って。
桐井
思いました?
辻橋
思いました。
正直、想像つかなかった。
桐井
社長(業)が嫌。大体、僕、会議嫌いやし、
人としゃべるん嫌いやし。絶対勘違いしてますよ。
ちょっと言わしてください。
僕、“人と話するん大好き”って思ってみえません?
辻橋
思ってますね。
桐井
僕、大嫌いです。
辻橋
(笑)
私、結構プロファイリング外すこと少ないんですけど。
私も人にすごい興味あるもんで。
桐井
僕は、みんなが会社終わって、全員がタイムカード打って帰ると、ほっとしますね。
1人いいよなみたいな。そこから大好きな新聞読んだり、
本読んだり、ごろごろしたり、
あんまりごろごろするといかんから仕事するかって、パソコンの前座ったりとか。
僕、結構気使いなんですよ。
辻橋
それはものすごく感じます。
桐井
すごい気使う。気使うもんですから、疲れるんですよ。
辻橋
そこかな。私が社長にすごい親近感を覚えるのが。
私も1人の時間、すごい好きなんですよ。
社長の、これは生きざまですね
桐井
今日も、後でお出しいただけるっていうケーキを、僕は用意させてもらったんですけど、
僕の買い方っていうのは、
辻橋社長はこれ系好きかな、誰々さんはこれかなとか考えながら買うんですけど、
Sさんは、
「社長!この上の段のやつを一つずつ入れて…」
「おまえ、誰がどんなものを好きかっていうのを考えて買わんと、
それは喜んでもらうということにならんやろ!」って。
それで結局、そうすることがなんで大事かっていうと、
出すでしょ。「うれしい、これはいいね」って、
僕の思いと反応がすり合うと、僕、それうれしいんですよ、すごい喜んでくれることが。
辻橋
社長の、これは生きざまですね。
仕事にも通じるし、プライベートもそうやし、
もはや生きざまなんだなと思いました。
自分がやったことが正しいのか、正しくないのか、違った…
そうやって、ただやってみればいい、じゃなくて。
桐井
こだわりますよ。どっか行ったときのおみやげなんていうのは、
「あの人は甘いもん嫌いって言ってたから、こういうのは駄目。
あの人は甘いもの好きやから、東京行ったら、とらやのういろうにしようか」とか、
「甘くなければ静岡の田丸屋のわさびにしようか」とかね。
そのわさびも、「大きなものじゃなくて、小さくて高いわさびが絶対喜んでもらえるかな。」って。
買って渡すまでの間、新幹線ですごい、うれしいんですよ。
どんなに喜んでくれるかなみたいなね。それ楽しみの一つですね。
辻橋
すごい。なぜ私は社長に惹かれたんだろうっていうところ、
いつも、よく考えるんですよ。
桐井
贈り物するときって、
「自分が好きなものは、お渡しする方も絶対おいしいって思っていただける」って
思い込んで買いますよね。僕、それ無いんです。
辻橋
それは素晴らしい。
桐井
その代わり、お会いして、ヒアリングで、いろいろと話をしてる中で、
好きそうなもの、嗜好とか、そういうのを頭に入れておくんです。
肉嫌いの人に食事しましょうって言って、
「あそこの座敷へ連れてったら、絶対喜んでもらえるって。
1人2万でも3万でも出してもええから、何とか産のすき焼き行きましょう。」
「私、肉食べれないんですけど、嫌いなんですけど…」
でも、そういう人はお構いなし。そこへ連れてったら絶対喜んでもらえると思ってるから。
辻橋
そして、そういう人に限って、「なんで喜ばへんのや」って。
桐井
大半これじゃないですか。
辻橋
大半がそれです。押しつけてしまう。
しかも違ったときに、「なんで喜ばへんのや」っていう。
相手を見ていないんですよね。
おみやげって、社長ほど私はこだわれてないなと思いながら、
すごいいい話で、すてきやなと思っていて。
おみやげって、喜んでもらう、もそうなんですけど、私がうれしいんですよね。
渡すという行為、みんなにこれ買ってったらうれしいかなっていって。
私もおみやげ好きで、よく買っていって、外すんですけどね、よく。
まだ人を見れてないなと思うんですけど。
私が、桐井社長のどういうところに惹かれていくんだろうって、
社長の根本にある生きざまな気がするんです。
すごく勉強というか、吸収させてもらっているなと思います。
<次週に続きます!>