前回の対談 第2回はこちら。
株式会社サンエルの代表取締役社長 辻橋 英延氏 を迎えて
始まった新企画、社長対談。
「成功したことへの未練がなく、次へ行けるのって、なんで?」
「なんでこの事業をやろうと思ったの?」
「楽しいって、なんだと思います?」
過去の経験と思いをたどりながら、
互いの今を紐解く対談の第3回、
桐井社長が辻橋社長に聞きたかったこととは…?
なんでプログラミング教室?
桐井
僕は辻橋社長に、実は一つ聞きたいことがあった。
子どもたちに対して、キッズラボ、プログラミング教室。
遊びながら覚えてねっていう発想の教室じゃないですか。
正直言ってプログラミング教室っていうのは、
世の中あんまり見たことないじゃないですか。
辻橋
まだ少ないですね。
桐井
小さいお子さんのお母さんっていうのは、
大体が英語とか数学、理科という教室に行かしたがるじゃないですか。
その中で、プログラミング教室っていうのは当初、
利益には結びつかないって思われてやってるように
見さしてもらってたんです。
それは辻橋社長の単なる趣味の世界なのか、
それとも本当に子どもたちが、そういうことを覚えて、
将来役に立つような、子どもたちのためにやろうっていう心意気でやられたのか、
もしくはもっと違う理由でやられたのかっていうのを聞きたかったですね。
辻橋
私は人に興味があって人が大好きなんですが、
高校もほとんど行ってなかったですし、
今の教育に対してすごく疑問があるんですよ。
「この教育で、みんな生きていけるの?
この先、何か役に立つの?人生楽しいの?」って思ってるんですね。
その中で私の思いとしては、
生きていく力を今の子どもたちに付けてほしいんですよ。
これからの「生きてく力」って何なの?っていったときに、
私はプログラミングっていうものが、英語でもなく、学歴でもなく、
これから先、彼らの生きていく力、
これからの世の中を動かしていく力になると思っているんですね。
辻橋
プログラミングを教えることの根本にあるのは
生きていくための力をつけてもらいたいということなんですよ。
本当は経営も教えたいし、サバイバルも教えたいんです。
でも、まずはプログラミングっていう今、一番、
分かりやすく力になるものを始めているんですけど、
キッズラボって、「プログラム」ラボじゃないんです。
「キッズ」ラボなんですよ。こどもたちのラボなんです。
だからデザインを教えていってもいいですし、
こどもたちが本当に将来を豊かにできるための力を
付けていってほしいのであって、
プログラムは目的じゃなくて手段なんですよという思いでやってます。
桐井
これはいいことやられてるって、僕はすごく思う。
きっと子どもたちが大人になったときに、
こちらの会社に感謝するんじゃないかな。
今なんか、「いい高校入って、いい大学行って、幸せになる」
って本当に言い切れるんかなっていう時代じゃないですか。
辻橋
おっしゃるとおりなんですよ。
桐井
そうすると、何かの能力を持たないと、
武器がなければ戦えない時代じゃないですか。
辻橋
私もよく親御さんに、まさに同じ言葉、
武器って言ってるんですよ。
この子たちが生きていく武器を与えてあげたいと。
それが昔は学歴やったし、でもそんなものでは、もうない。
多様な世の中で、今武器になるのはプログラムです、と。
「楽しい」ってなんだと思います?
桐井
社長はすごくいいことやられてると思ってて。
子どものときを振り返ってみると、
僕、全然勉強ができなくて、本当にすごいできなかったです。
うちの姉と弟は小学校、中学校と首席で、
高校も、うちの弟なんか私立も受けませんでしたよ。
松阪高校一本で、落ちるわけねえじゃねえかみたいな。
「落ちたらどうすんの?」「落ちるわけねえじゃねえか」っていう。
辻橋
相当できますね。
桐井
姉もそうです。僕は同じきょうだいでも、
なんでこんなに違うんやろうと思うぐらいできなかった。
僕、中学校で一学年320番中、一番悪かったときで、
285番ぐらいのときありましたよ。そのとき、
「僕よりまだできないやつが35人もいるんか」みたいな 笑
これは僕の人生観。
辻橋
面白いな。
桐井
面白いでしょ。勉強できた子を見てると、
頭がいいから勉強できたんじゃないの。
勉強が好きやからできただけ。
辻橋
さっきの知識と知恵の話にも近いものありますね。
桐井
だから、勉強が好きだったら、
偏差値はぐっと上がると、僕は思ってるんです。
勉強が嫌いな子どもをつくってるのは、環境じゃないかなって。
辻橋
私も中学のときに、どべから2番やったんですよ。
桐井
本当ですか。
辻橋
本当です。
勉強というものに興味が持てない。
なんでやるのかが分からなかったんで。
いい大学行ったら…いい大学行って、俺何すんの?って。
例えば官僚になりたくて、日本を変えたいとか、
そういうのがあったら勉強してたかもしれないんですけど。
桐井
キッズラボで、楽しいなっていうのを教えたってほしいんよね。
辻橋
まさに。
桐井
楽しいって思えたら、その子は
飛躍的に伸びるじゃないですか。押しつけじゃなくて。
辻橋
そこは本当に忘れちゃいけない。
つい、「親御さんから、時間とお金を頂戴してるので、
ここまでは覚えてほしい、教えよう」
っていうふうに寄りがちなところを、そうじゃないよねって。
それやったら勉強と変わらへんし、
興味を持って楽しんでもらうっていうところに向かいたい。
私が特に最初そうだったんですよ。教え始めのとき。
無理やり100%覚えさせることが目的じゃないよねっていうのは、
社長にも言われて、あらためて再認識ですね。
桐井
じゃあ楽しいっていうのは、どう定義つけます?
辻橋
私は、楽しいは、私の定義だと、広がりなんですよ。
桐井
広がり。
辻橋
今までの自分の価値観とか、
自分の知恵、知識、世界が広がる瞬間が、
私は楽しいと思うんですよ。
できることが増えるも広がりだし、知ることも広がりだから、
こどもたちの世界を広げてあげる、ということができたらと思います。
私が人生で転機だなって思った瞬間、
狭い自分の価値観が広がっていったときが、私の「楽しい」です。
辻橋
逆に社長の「楽しい」もお聞きしたいですね。
社長の楽しいって、定義としては。
桐井
それ簡単です。
僕でもできたんだ、私でもできたんだっていうときの達成感です。
辻橋
達成感。
桐井
達成感が充実感につながると思います。
そうすると、次にトライするんです。
うちのスタッフも言うんですけど、1が5にはならんよって。
ところが1をスタンダードで生きてる人間が2になったら、
今度は2がスタンダードになるよね。
これが、2がスタンダードになると、今度は3になるんだよね。
3が基準になると、4、5っていけるんだよね。
そうすると、気が付いたらこんなにできるようになったんだって。
僕の仕事はすごい早いです。
ブログも、あれ15分ぐらいで書きます。
最初、ナンバーワン、1週間かかって、本当に苦しみもがいて、
1枚目完成したのがうそのようで、それは覚えとるんですけど。
僕は自分に課してることがあるんです。
ぱんぱんに仕事を詰めるっていう。
一日の仕事量が、できそうにもないっていう仕事量を
自分に課すんです。
そうすると、
「1時間余計に仕事をしてそれを片付ける」っていうことじゃなくて、
同じ時間の中で、その仕事量をこなすには、
どうすればいいかって考えますよね。
それが解決できると、さらにもっと詰め込むんです。
だから、ずっと、ぱんぱん以上、能力100あったら、120、130を与えて
ここまで来たもんですから、知恵があると思いますね。
辻橋
相当。
知恵もそうなんですけど、お母さまの言われた、
努力する才能っていうところに、ひもづいていると思うんです。
普通の人間は、つぶれたりとか、
嫌気がさしたりっていう人も多いと思うんですよ。
「楽しい」の定義、社長にもお聞きして、私もよく悩むんですよ。
楽しいって結構、人によって違うんだろうなと。
桐井
そうそう。人によって違う。
辻橋
上がってく楽しみを、楽しみに思えない人も、
ひょっとしたらいるかもしれないんですよ。
ここで同じことを回してるのが楽しいっていう人もいるし。
だから本当、こどもたちの楽しいだろうもそうですし、
社員たちの楽しいはどうなんだろう。
自分の楽しいと照らし合わせて、どうやら違うようだぞっていうのが。
こける痛みを味わって
桐井
僕の書いたブログをアップしていただいてるじゃないですか。
「このページのここは外さんといて」っていうのが僕の中であると、
その思いが通じてるのか、
最近そこの辺りを黒く太字にしてくれたりしてくれてるんですよね。
そういう瞬間が、きりい挑戦プロジェクトっていうチーム名で
みんなが一つの目標、結果を求めて頑張ってもらってる中で、気持ちを感じるのね。
その気持ちが、僕はすごくうれしくて、
期待に応えなあかんのなって、思う瞬間なんですよ。
「よくこれだけ次から次へとブログを書けるもんだな」って、
思ってくれてると思うんですけど、
この辺が、いわゆる絆みたいになってて。
だから僕、社長にお願いしたいのは、
サンエルさんっていうのは基本的に大きい企業さんの、
いわゆるサポートを得意とする会社じゃないですか。
辻橋
結果からするとそうなってますね。
桐井
今、苦しんでるのは中小なんですよ。
中小はあんまりもうかりませんよね。
細かいこと、ごちゃごちゃ言うし。
大企業っていうのは一発決まったら、
決まるまでは時間かかるかも分かりませんけど、
決まったら、あとはほったらかしじゃないですか。
企業の中で担当がおるわけやから、
担当が全部、更新とか、いろいろされるわけじゃないですか。
ところが中小っていうのは、ほとんどが社長1人でやっとるの。
社長が全部考えて、社長が全部指示出して、
出した結果もまた社長が拾って、
それに対してまた社長がフィードバック、っていうのが中小なんですよ。
こういう会社に、もっと踏み込んで応援したってよ!みたいなの、僕はある。どう?
辻橋
実は、私はそれがしたくて三重に戻ってきたんです。
桐井
おお そうなんだ!
辻橋
もともと「東京でやったらいいやん」
って言われてたんですよ、サンエルって。
ローカル、地域の輝く太陽になりたいっていう思いで、
地域の企業さんといろんなことがしたいと思って来たんですが、
正直私も、これはビジネスモデルがうまくできてなかった、
そして思いが足りなかったと思っていて。
私、正直にいうと、思いが現実に負けた瞬間があるんですよ。
このままでは会社つぶれる。
地域でいろんなビジネス試したんですけど、“このままではまずい”となって、
大手クライアントさんとの、ゲームですとか、
システム開発っていうところにいった時期があるんですよ。
これは私も、明確に自分で思ってます。負けた時期です。
従業員、会社を守るっていうほうにいった時期があるんですよ。
ようやくなんですよ、ここ2~3年で。
桐井
でも、負けたっていう思いはよかったんじゃないですか。
子どもが自転車に乗り始めるときに、
こけないように後ろを持ってやって、
ちゃんと乗れるまでは支えてやって練習してて。
それを見て、人の子やから言わないんですけど、
「『こけたら痛いよ。こけたら痛いから、
こけやんときや、気を付けやんと痛いよ。』っていうけど、
どんだけ痛いか分からんかったら痛いにならんだろう」というのが僕で。
こんなもん、こかしたれよ、こかしたぐらいで
骨折れへんだろ土の上やから、みたいな。
こけると、こんなに痛いんだって思うことが大事。
だから社長が「負けた」って、潔く言われてるというのは
いいことやな。
だから今のサンエルさんがあるんだろうな。
辻橋
本当に社長言われるとおりで、
キッズラボでプログラミング体験をやると、
親が先回りして、「これ、こうやろ」って言うことが多いんです。
「それは絶対やらないでください。
子どもが戸惑っとるのを見るのも、それも親としての責務です」
っていう話をするんです。
失敗をさせないじゃなくて。失敗を楽しめるような。
うちのプログラミングだと、インターネットつながらないとか、
最低限、崖の上で自転車は乗せないんですよ。
ちゃんと土の上の自転車になるように、
事故が起きるとかそういうことにはならないように、
大人はしっかりしてるけども、こける痛みは味わってほしいなって思います。
〜対談のおともにいただいたおいしいスイーツをご紹介〜
パーラーオクノさん
・いちごのタルト
・いちごのロールケーキ
松阪駅から徒歩5分ほどの位置にある
かわいらしい内装のお店。
季節の果物を使ったケーキが並んでいます。
月替わりのクレープも人気です。
初めての試みとなった社長対談、
途中でおやつの時間にするはずが
気づけばそのまま2時間の対談となり、締めのケーキになりました。
長丁場の収録でしたが、やさしいおいしさに癒されました。
<対談は全5回。次週に続きます!>